McCombsが他のMBAとの差別化を図っている点としてEnergy Financeを始めとする豊富なエナジー関連プログラムの存在を挙げる事ができます。一般的なビジネススクールでは、ファイナンスやマーケティング、コンサルティングなどが王道のキャリアTrackとして認識されていますが、McCombsにはそれらと並ぶものとしてEnergy Financeが用意されており、こうしたエネルギービジネスに力点を置いたMBAプログラムはMcCombsならではのユニークな特徴です。また、元来エナジーと言えばオイルメジャーを代表する資源ビジネスや発電所建設に関するプロジェクトファイナンスが中心でしたが、近年McCombsは再生可能エネルギー、いわゆるClean Technologyにも力を入れており、2009年にConcentrationの一つとしてClean Tech Concentrationが立ち上げられました。このようなこともあり、毎年エネルギービジネスに関心を持つ学生が多く入学する傾向があり、授業でも地元テキサスのオイルメジャーに関する話題が多く挙がるとともに、再生可能エネルギーや発電所を題材としたプロジェクトも数多くあります。彼らの卒業後の進路としては、エナジー関連のコンサルティングファームや投資銀行のほか、テキサスならではのオイルメジャー、資源会社、電力会社といった民間企業のファイナンス部門、リスクヘッジ部門を目指す学生が非常に多いのが特徴的です。さらに、最近の傾向としては、ベンチャーの盛んなAustinに立地する太陽光や風力といったクリーンテック関連の企業に就職するケースや、自らCEO、CFOとしてクリーンテックビジネスを立ち上げる学生も増えてきており、広い意味でエネルギービジネスのキャリアを目指す学生はMcCombsの中でも最大派閥の一つを形成しています。したがって、これらの業界に対するキャリア対策が非常に充実しているのもMcCombsの特徴の一つと言えるでしょう。

その他、Wind Law、Politics and Policies of international development、Oil and Gas Financial Management、等他学部の科目を取ることもでき、Energy系のクラスのみを取得して２年間を終えることも可能なほど多くの選択肢があります。

McCombsのEnergy系クラブはEnergy Finance Student OrganizationとClean Tech Student Organizationの２つがあります。両方共活動は活発で、Energy ForumやAustin Electricity Conference等のEnergy Summitやゲストスピーカーを招いた講演の開催のほか、Austin市内のLNG・石炭火力発電所、給電指令所、原子力発電研究所の見学や、Houston、Austin市内のエネルギー企業訪問等が多くアレンジされています。これらに参加することができるのは勿論のこと、当該クラブのOfficerとなれば自身でアレンジすることも可能です。また、これらのクラブがエネルギー企業などから依頼されてプロジェクトを立ち上げることも多く、例えば過去に「太陽光パネルの設置を検討している大手スーパーマーケットチェーン店から、どの店舗にどれだけの太陽光パネルを設置すべきか収益性等の定量分析を行なって欲しい」といったプロジェクトもありました。さらに、選抜プログラムに記載しているClean Tech FellowsはClean Tech Student Organizationが立ち上げたプログラムであり、クラブが主体的にプログラム作成に関わろうという動きは活発で、今後さらに充実していくことが期待されています。これらの活動が評価され、2010年にはClean Tech Student Organizationがテキサス大学大学院全学部のクラブの中から、Best Graduate Student Organizationに選ばれました。

豊富なHands-onプログラムを持つMcCombsでは、当然エネルギーに特化したHands-onプログラムやプロジェクトも多数用意されています。例えば、ベンチャーインキュベーションを行う前述の[Y1] 、前述のEnergy Finance Practicumや、エネルギービジネス関連の企業を相手としたPlus Projectも当然ながら多数存在します。その他、Texas Venture LabsやVenture Fellowsといった組織での活動においてもクライアント企業の中にClean Tech企業が多く含まれている傾向があり、エネルギービジネスに関連したコンサルティング等の実践的な取り組みが可能です。最後に、将来開講予定のGlobal Transactionは石油・ガス田の収益性・価値評価を行うプログラムとして学生間でも注目されています。

また、McCombsが立地するテキサス州は米国内でも再生可能エネルギーの導入やスマートグリッド実証実験といった面で独特のエネルギー関連政策が採られていることでも有名であり、こうした環境に身を置くことで常に最新のエネルギー事情を得ることができます。例えば、テキサスの広大な土地とその豊富な風量を活用した風力発電の設備容量は10GWと全米一位であり、その容量は今後も増加が見込まれています。また、2012年頭にはMcCombsが立地するAustin市内に日本のメガソーラーをもしのぐ30MW級のソーラーファームが運開しました。さらに地元の電力会社であるAustin Energyは、保守的な傾向の強い米国の他の電力会社と異なり、2020年までに供給電力量の35％を再生可能エネルギーで賄うという野心的な目標を掲げており、今後も州内または市内での一層の再生可能エネルギーの伸びが期待できそうです。その他、近年注目を浴びるスマートグリッド関連の実証実験として、Pecan Street Project、Tresamigas Project等も行われており、多くの関連企業やベンチャー企業がAustinでビジネスを展開しています。こうした背景もあり、Texas Offshore Wind Energy Roundtable、Natural Gas Use in Texas and Unconventional Hydrocarbon Production、Smart.Clean.Energyといったエネルギービジネスに関連した各種セミナーや勉強会がAustin市内で頻繁に開催されており、課外・学外においてもエネルギービジネス関連の活動に従事する機会に非常に恵まれています。